美手

2009.12.03

たとえば男性なら女性 女性なら男性の好きなところはどこか?
と聞かれたらなんと答えるか。もちろん顔でもいいし、好きな仕草だって
いい たとえば「魚を上手に食べる人」なんてのも有りだと思う。
私は昔から 手がきれいな人 だ。

ある時ある人のその手がとても温かく素敵なものだった。
久しぶりにその手に恋をして、せつないという気持ちを思い出させてもらった。

活版印刷の事を聞いたのはいつ頃のことだろう。なんとなくは知っていたが
(名刺だって活版印刷なのだから)はっきりと意識した事はなかった。
福岡の住吉にある創業50年以上になる活版印刷所の店主が体調を崩された事で
店を閉める事になった。「言葉を組む仕事」と題しalbusでは写真展+活字なども
見れる展示が行われている。
展示を見にいくと、先にいたスーツ姿の男性がじっと長い間動かず見ている。
写真を見進めていくと おや?どこかで見た顔の人が写ってる あ!後ろのスーツの人
店主の息子さんだった。思わず「息子さんですか?」と話しかけていた。
少しお話をさせてもらった。息子さんは跡は次いでいないものの印刷会社につとめて
いるそうです。やはり幼い頃から父の背中をみて育ち影響をうけていたのかも と。
そして仕事の繊細さ、職人の仕事ですから僕にはとうていできません と静かに言われた。
そして、こんなふうに展示していただいて ありがたい と。

本当にいいものはかたちをかえても残り 続いていく。
気の遠くなるほどの活字を組みづつけた インクのついた手が 写真を通し とても
たくましく、美しく、そして違った意味のせつなさが私の心にずっしりと響いた。

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